ときは20XX年。
かつて古代の人類たちが新天地を求めて、
エジプトの地から世界中に広がっていったように、
地球上の人々はもはや惑星をこえて、宇宙へ足を運ぶ時代になっていた。
その根本にあった想いは、とってもシンプルだ。
「なんか面白いことないかなー」
「もっとワクワクしたいなー」
テレビやインターネット、スマホにも飽きた人類は、
新しいエンターテイメントを求めて、
宇宙旅行に出かけるようになっていたのだ。
20XX年の宇宙には多くの惑星があり、
それぞれの文化があった。
惑星CHIBAでは、ネズミが夢と魔法で多くの人々を魅了し、
惑星OSAKAでは、ナンデヤネンという呪文が皆を笑顔にさせ、
大惑星TOKYOは言うまでもなく、花の都ダイトーキョーだ。
(言葉の意味は分からないが、とにかくすごい自信だ)。
そんななか、TOKYOのほど近くにある、
誰も耳にしたことのない惑星の存在が今、大きな注目を集めていた。
それは、一冊の古文書が見つかったことがきっかけだった。
そこに書かれていたのは、日本の伝説の義賊・石川五右衛門の物語。
その一節に、五右衛門が処刑される前に放った言葉がつづられている。
おれの財宝か?
欲しけりゃくれてやるぜ…
探してみろ。
この世の全てを、なんちゃって東京に置いてきた。
ちょっと待て、なんちゃって東京?どこだ、それ?
というか、これ…どこかで聞いたような話だ。
まぁいい、G(五右衛門)の意志を継ぐもの。
宇宙の冒険者たちは、なんちゃって東京を目指して、
大いなる航路を旅するのであった。
そうして冒険者たちがたどり着いたのが、
惑星YASHIOだった。
というか、ここTOKYO?SAITA…いやちがう!
ここはれっきとした、なんちゃって東京である。
なんちゃって東京(YASHIO)には
かつてジャポニスム文化を彩った財宝の山々と、
膨大な数のクレーンがあった。
ん?ていうか、クレーン?なんで?
その風変わりな宝の山を見ていると、五右衛門の声が響きわたる。
「ぎょーさん、取っていきー」。
なぜ関西弁!?
そんなことはさておき、なんという太っ腹!
この、ひとつなぎの財宝を自由に持っていっていいとは!
能力者でもないのに!
ただ、やはりそこは石川五右衛門。
ただでは終わらない。
どうやらクレーンで宝物をすくいあげ、穴に向かって運び、
それに成功した者だけが
財宝を手に入れられる仕組みらしい。
人々はこぞってクレーンを動かし、獲物を狙いはじめた。
とんでもなくシンプルな試練なのだが、
これがなかなか難しい。
取れそうで取れない。
でも、コツさえつかめばバンバン取れる。
なぜか取り方を教えてくれる五右衛門の子孫たちもいる。
ああ、面白い…。なんだ、これ、ワクワクする…。
宇宙一のエンターテイメントが
誕生した瞬間だった。
人類が求めていたワクワクが、ここなんちゃって東京にあった。
そうだ、五右衛門は財宝を求めていたのではない。
お宝をゲットするドキドキを夢見ていたのだ。
宇宙時代になっても、人々の気持ちは変わらない。
五右衛門よ、安心してくれ。そなたの意志は今、
ここ「とってき屋」に受け継がれているぜよ(なぜか土佐弁)。
「おれは、クレーン王になる!」
子ども達の歓声が、YASHIO…いや、
なんちゃって東京の広大な空に溶けていった。